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ぴよぴよカメ(前編)

ケイ・スリー

 学生にあがってもぼくには、友だちはできませんでした。みんなで遊ぶのは苦手で、学校より家にいるほうが好き。ところが最近、お父さんとお母さんはケンカばかりして、ぼくの居場所がありません。こんないやな気分を慰めてくれるのは、ぼくのたった一匹の友だち「かめぞう」でした。ぼくは、さびしいとき、かなしいとき、かめぞうに話かけます。かめぞうは、首を長くのばし、鼻先を水面に出して、だまって、ぼくの話をきいてくれます。水に浮き、すずしい顔しているのを見ていると「キミは、悩みがなくていいね。」とうらやましく思うことがあります。かめぞうは、お父さんとお母さんがぼくの手ひいて連れて行ってくれた去年の夏祭りの時に買いました。はじめは反対していたお母さんですが、ぼくが責任もって世話をする。エサもやる、水も交換する、水槽も洗うと、いう約束で、やっと手に入れたミドリガメです。

る日のこと、水槽を洗っているときに、かめぞうがいなくなってしまいました。ほんのちょっとだけ目をはなしただけなのです。カメの足だからそんなに遠くに行っていないだろうと、家のまわりをさがしても、近くの庭をさがしても見つかりません。ああ、神様、たすけてください。ぼくの大切な友だちを見つけてください。もし、見つけてくれれば、どんなことでもします。ぼくは、そんな気持ちで必死にさがしまわりましたが、かめぞうは見つかりません。そのうちに日も暮れ、あたりも暗くなってしまいました。明日もう一度さがそう。ひょっとして朝になったら帰ってくるかもしれない。神様、お願いします。ぼくは、そう願いました。

起きると、ぼくは水の中をバタバタと水をかいでいました。そうです。ぼくの体がカメの姿になっていました。どうしよう。魔法か何かわかりません。背中に甲羅、手にのツメ、どう見てもカメに間違いありません。きっと夢だ。夢に決まっている。そう思いました。しかし、ほっぺたをつねようとしましたができません。まして、声に出してさけぶこともできません。ぼくは、ただ水槽の中で、ジタバタするしかありませんでした。水槽の透明なアクリル板のむこうに、まぎれもない、大きなぼくがいました。ぼくは、とても怖い顔をして、何だかグチグチと話していますが、何を言っているのかわかりません。しばらく見つめていたかと思うとぼくを水槽から取りだし、ぼくの体をゴシゴシと洗いだしました。ぼくはビックリで痛いやら怖いやらで、できることは甲羅の中に、頭や手足を引っ込めるしかありません。それからホースからものすごい勢いで水をからかけられ、生きた心地がしませんでした。ぼくは、ここにはいられない、この場からすぐに、逃げよう、逃げだそう。そんな気持ちでいっぱいになりました。ぼくは、ぼくが水槽を洗っているうちに逃げ出しました。

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