② ある日のこと、前から4番目の席で旬くんが無敵モードで目を閉じていると
「ああ、座るところが無いね。年寄りにはつらいわ。」
通る声、明らかに演技を見せつける老女二人、70歳ぐらいの怖いものなしだ。
「あそこに一つ席あるみたい。あなたはあそこに座れるわよ!」
と先手必勝、有限実行、矍鑠としている。
旬くんは素早く立ち上がり振り回されるように老女に席を譲ると
「お兄さん、ありがとう。ちゃんと教育を受けているね。親御さんが親御しっかりしてるんだね。日本の未来は明るいわ。」と聞こえよがしにいう。
嫌味で図々しい。高齢者社会を盾に降り飾る刀。厚かましく席を譲っても気持ちよくない。この二人に敬老感謝はない。
しかしながら一度、席を譲ると癖になる。旬くんはその老女たちが乗り込むバス停を意識するようになっていた。
老女たちの乗るバス停近くになると老女がいるか?を
チェックするのが日常になっていた。
同時にバスの空席をチェックする係にもなっていた。
もし、老女たちが乗込む時に座れる席がなければ旬くんがつり革をつかめばいいのである。
「高齢化社会、老人は強し。日本の未来は明るいわ」
そンな経験から旬くんはとっておきの場所(バスの一番後ろのシートの両端)を見つけ、そこに座ることにした。
ここなられ誰にも邪魔されない。安心してウトウトできる。
続