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旬くんにはわかるまい~髪切った言う課長編

木陰で休んでいるオラー(天使)の前に、二人男が現れた。

サラリーマン?お笑いか?堕天使か?

「旬くんでーす」「米(ヨネ)でーす」

旬は20歳半ばの長身、二枚目ではないが人懐こい顔をしている。

ヨネは初老のおやじでキザなメガネをかけている。

お笑いにはいろいろなコンビがあるが、おやじと孫の世代で漫才するは珍しい。

旬くんは隣のヨネを見ていらだっている。

(そういえばヨネスケもいるんだ。パッとしないな。)

  • 天使のオラーは心の声がわかるのだ。

とりあえず男二人組が目の前に現れた。

旬:K課長は大丈夫な人なんですかね。

(誰にでも「髪切った」「髪切った」のワンフレーズで話しかけているけど、全く話が続いていない。他部署の男子社員が来ると必ず「髪切った」と声掛けするのを見かけるけど誰も苦笑いしてアクションもない。いらなくウザいだけだ。人気もない!)

K課長が上司だと何か恵まれてないですよね。

(K課長は40代半ば、小柄でひ弱そうなヘタレ感じのサラリーマン。何の功績も実力もない。ただ、いい時代に会社が入り年功序列で今の地位にいる。丸坊主で、いつもニコニコしている。)

米:何があった、若者よ。K課長の悪口かい。K課長は俺の元の部下だよ。(あっという間に追い抜かれたけど)

旬:今さっき、K課長に呼ばれ、また、席替えだそうです。

今度は米(ヨネ)さんの後ろ側に座ることになります。

それにしても何回席替えをすればいいのすかね。

米:よくある話。よくある話。君も席替えが好きだね。

組織っていうのはいつも上の都合で動くんだよ。上が動きやすければいい。どんなに現場が頑張っても、現場の人の気持ちは考えないし考える必要がない。理不尽上等。

旬:そんなもんですかね。(珍しくまともなことを言う・・・)

米:旬くん、うちの会社は何を扱っている?

旬:製薬と人材派遣です。そのほか様々やっていますが・・・

米:旬くんが派遣されたと思えばいいじゃないか?

何事も経験だよ。

旬:(何を言ってるのこの人は?)

何で、僕だけが被害者にならなきゃならないんだ?

(K課長は「髪切った」と「席変わって」だけで何の実績も取り得もないのに課長かよ・・・)

  • そこで天使のオラーは閃いた。

髪切った言う課長はちゃんと仕事しているね。

何事も理由がある。

旬くんは会社で研究している「ストレス」の測定モニターなのだね。本人に気づかれないようどこの会社にでもアンバランスな環境を自然なように作りだし、別動隊が観察するというパターンだね。会社も随分大胆でシークレットな研究だ。

旬くん周りの人をよく見てごらん。

気が向けばオラーも君をモニターするよ。

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