天使のオラーお気に入りの旬くんは20歳半ばの長身のサラリーマン、少し人懐こい顔でいつも口をパクパクさせている。
旬くんの朝の風景を見てみよう。
毎朝のバス出勤はサラリーマンは辛いね。
出勤は朝七時丁度のバス。始発から約40分かけてのドラマが始まる。始発からだから普通に席に座ることができるラッキーが当たり前になっている。乗車はいつも10人ぐらいでいつも同じ顔触れだ。座る場所もほとんど定位置だった。バスの座席は進行方向を向いている。片側に1人掛けが7つ、その後ろに2人掛けが3席そして最後列が5人掛けになっている。乗り込む時はみんな優先席を避けるようにして自分なりの定位置に滑り込む。
旬くんは前から4番目の席がお気に入りだったが、最近は最後列の隅に変わってしまった。最後尾は一番な快適だがバスから降りるときは少し苦労するが難点だが安住の地だから仕方ない。
席に座り、目をつぶると自分の世界、何人もこの世界を壊してくれるな。いじってくれるなである。
席に座り目をつぶると「無敵」になれる。
嫌なことは目に入らなければ気にならない。
この貴重な時間、体力温存、旬くんはこの時間は眠りたい。バスの中でウトウトするのは至福なのだ。
何人も邪魔するなと旬くんは思うのである。
前から4番目の席に座っていたころ、至福の時を妨げることがあった。前から4番目の席には優先席ではなく誰でも座ってよい一人掛けのフリー席だ。見晴らし良いし降りやすく最高の席だ。目をつぶれば「無敵」のはずだった・・・
しかし、群雄割拠、縄張り争い、席取り合戦がそこはあった。
ガシャガシャクシャクシャ頭の上から音がする。
頭の直ぐ上?後ろ?頭の中、耳元でガシャクシャ音が止まらない。「何の音」このガシャクシャ音、聞き覚えがある。
ガシャクシャ音が気になりウトウトできない。
ここで、ガシャクシャこの音は?
が自分にだけに聞こえるのか?
音の答えを理解する前にブーンと海苔の香りが鼻をかすめた。
誰かおにぎりを食っている。アルミでくるんだおにぎりを食っている。
遠慮ないアルミ箔のガシャクシャ音が耳元で頭の中で響く
いや、騒ぐのだ。
至福の時がこのアルミ箔のガシャクシャで台無しになった。その音の主の顔でも見てやろうと振り返ればいいだけのことだが、それができない自分に不甲斐なさを感じる。
ガシャクシャ音はしばらく続いた。勘弁してくれ!
俺の至福の時を壊された。
旬くんにおにぎり事件は衝撃的であったが、アルミ箔音はしばらく続き、音の主を確認することができた。音の主は、旬くんと同じぐらいの年の女である。若い女というだけで、あまり興味が持てなかった。
顔もスタイルも雰囲気も旬くんとは無縁でいいものだった。
それよりもなんで通勤の公共機関の中で平気で、堂々とおにぎりを食えるのかというハテナの方が大きい。
神経がわからない。
それでも旬くんはその背景を考えてしまう。
忙しい女なのだろう。家族の応援があるな。
朝の貴重な時間、愛する娘のために何か口に入れろ。
少しでも食えとお母さんがおにぎりを作ったんだろう。
疲れている娘を少しでも長く寝させていたい。親心だ。
例えそれがお母さんからの愛情だったとしても、旬くん
のウトウトを妨げるのはと如何なものか?
そんな日が続き旬くんは彼女のおかげで耳栓を買った。
耳栓は効果はなかった。反ってアルミ箔のガシャクシャ音が耳に残り、また、苔の香りは鼻についた。
「お母さん、おにぎりはラップで包んであげてくれよ!」
旬くんは彼女を意識するようになり、彼女が近くに来ると自然に立ち上がりその場から離れた。
天使のオラーお気に入りの旬くんは20歳半ばの長身のサラリーマン、少し人懐こい顔でいつも口をパクパクさせている。
旬くんの朝の風景を見てみよう。
毎朝のバス出勤はサラリーマンは辛いね。
出勤は朝七時丁度のバス。始発から約40分かけてのドラマが始まる。始発からだから普通に席に座ることができるラッキーが当たり前になっている。乗車はいつも10人ぐらいでいつも同じ顔触れだ。座る場所もほとんど定位置だった。バスの座席は進行方向を向いている。片側に1人掛けが7つ、その後ろに2人掛けが3席そして最後列が5人掛けになっている。乗り込む時はみんな優先席を避けるようにして自分なりの定位置に滑り込む。
旬くんは前から4番目の席がお気に入りだったが、最近は最後列の隅に変わってしまった。最後尾は一番な快適だがバスから降りるときは少し苦労するが難点だが安住の地だから仕方ない。
席に座り、目をつぶると自分の世界、何人もこの世界を壊してくれるな。いじってくれるなである。
席に座り目をつぶると「無敵」になれる。
嫌なことは目に入らなければ気にならない。
この貴重な時間、体力温存、旬くんはこの時間は眠りたい。バスの中でウトウトするのは至福なのだ。
何人も邪魔するなと旬くんは思うのである。
前から4番目の席に座っていたころ、至福の時を妨げることがあった。前から4番目の席には優先席ではなく誰でも座ってよい一人掛けのフリー席だ。見晴らし良いし降りやすく最高の席だ。目をつぶれば「無敵」のはずだった・・・
しかし、群雄割拠、縄張り争い、席取り合戦がそこはあった。
ガシャガシャクシャクシャ頭の上から音がする。
頭の直ぐ上?後ろ?頭の中、耳元でガシャクシャ音が止まらない。「何の音」このガシャクシャ音、聞き覚えがある。
ガシャクシャ音が気になりウトウトできない。
ここで、ガシャクシャこの音は?
が自分にだけに聞こえるのか?
音の答えを理解する前にブーンと海苔の香りが鼻をかすめた。
誰かおにぎりを食っている。アルミでくるんだおにぎりを食っている。
遠慮ないアルミ箔のガシャクシャ音が耳元で頭の中で響く
いや、騒ぐのだ。
至福の時がこのアルミ箔のガシャクシャで台無しになった。その音の主の顔でも見てやろうと振り返ればいいだけのことだが、それができない自分に不甲斐なさを感じる。
ガシャクシャ音はしばらく続いた。勘弁してくれ!
俺の至福の時を壊された。
旬くんにおにぎり事件は衝撃的であったが、アルミ箔音はしばらく続き、音の主を確認することができた。音の主は、旬くんと同じぐらいの年の女である。若い女というだけで、あまり興味が持てなかった。
顔もスタイルも雰囲気も旬くんとは無縁でいいものだった。
それよりもなんで通勤の公共機関の中で平気で、堂々とおにぎりを食えるのかというハテナの方が大きい。
神経がわからない。
それでも旬くんはその背景を考えてしまう。
忙しい女なのだろう。家族の応援があるな。
朝の貴重な時間、愛する娘のために何か口に入れろ。
少しでも食えとお母さんがおにぎりを作ったんだろう。
疲れている娘を少しでも長く寝させていたい。親心だ。
例えそれがお母さんからの愛情だったとしても、旬くん
のウトウトを妨げるのはと如何なものか?
そんな日が続き旬くんは彼女のおかげで耳栓を買った。
耳栓は効果はなかった。反ってアルミ箔のガシャクシャ音が耳に残り、また、苔の香りは鼻についた。
「お母さん、おにぎりはラップで包んであげてくれよ!」
旬くんは彼女を意識するようになり、彼女が近くに来ると自然に立ち上がりその場から離れた。
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