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大地の瞳 #4

ケイ・スリー

帰り道、住み込みで働きなれた牧場も広く感じました。道端に咲く小さな花はカジュを慰めているようでした。カジュの目の先に数頭の馬が見えました。その中にチャップの姿も見えました。チャップは自身に満ちた顔つきでで仲間の馬たちの中でも堂々としています。カジュは、チャップに手を振りました。いつもならカジュに駆け寄ってくるはずです。ところが近寄るどころか仲間の馬とじゃれあってカジュをまったく無視します。気がついているはずなのに・・・カジュは悲しい気持ちになりました。ソン獣医のいった言葉が身にしみます。チャップは牧場で仲間の馬といれば幸せなのです。カジュがどんな思いでこの牧場で働いていたのかなんてチャップにはわかりません。これからのチャップのことを考えると無理に連れ去ることはできません。「幸せになれよ」とカジュは心の中でチャップに別れを告げました。

家に帰ろう。家にはやさしいおばあさんが待っているはずです。

おばあさんには心配をかけたくない。笑顔で帰ろうとカジュは思いました。久々に帰る家は、何も変わらず、懐かしいはずですが、どこか違います。おばあさんの姿はありません。おばあさんはどこに行ったのでしょう。おばあさんは既に亡くなっていたのです。カジュがマゴウのところに住み込んでまもなくのことだったそうです。おばあさんは死に際に、カジュはチャップを見守ることで大きくなる。その邪魔をしたくないというのが、最後の言葉だったそうです。どんなに泣いてもおばあさんは帰ってきません。カジュは本当にひとりぼっちになってしまいました。悲しくて悲しくてたまりませんがカジュは強く生きていかねばなりません。それはおばあさんの願いです。悲しい時間はとても静か長いものです。それからどれくらいかたったでしょうか?

どこまでも広がる北の大地にカジュの姿がありました。吹く風は気ままで「お前を縛るものは何もない。どこに向かうのも自由だ」といっているようです。大きな目、長いまつげ、遠くからでもわかるそのすみきった瞳はどこを見つめているのでしょう。

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